親が親たる所以
経営者が経営者たる所以

個別より、個別のナルゼミ


先日、知り合いから紹介されて上通りの先にある小料理屋に行ったときの出来事です…隣のテーブルで賑やかしく女子会があっていました。それ自体は良いことなのですが、スグ隣にいるので彼女たちの話し声が嫌でも聞こえてきます。

「これ、ウチ(私?家?)でもできるよねー!」

「うん、できる!できる!」

「これ、原価いくらかかってんだろー?」

「…円ぐらいじゃなーい?」


少々寂しい話題でもありますが、そもそも飲食店に行って、家でも作れるかどうかをいちいち判定するのは如何なものでしょう?だったら来なければいいのに…。

飲食店の料理には技術代(人件費)や演出代、備品や家賃、その他の経費が乗っかっています。それを家庭料理と同じ土俵で比べること自体ナンセンスです。そんなこと言い出したら、喫茶店やカフェの珈琲は…?缶ジュースは…?買えないでしょ。ブランドもののバックだって同じこと…。でも、スイーツやジュース、ブランドもののバックを買うときはそんなこと考えないんですよねー。理由ですか?自分で作れないからです^^; まぁ、そう考えると、隣にいた女性たちはきっとある程度、料理ができる方たちなんでしょうね!! 素晴らしい! 



プロとアマの仕事を混同するという話…個人のレベルではこんな感じの単なる笑い話で済みますが、会社経営になると話は少し変わってきます。会社で経営者が従業員(自分)でも何となくできそうなことをそれぞれの専門分野でプロの手を借りずに安く済ませようとしたりしがちですが、これは大きな間違いです。

事実、こんな光景を目撃しました…あるゴルフ場の支配人が、お客さんが少ないからといって暇なキャディーさんに駐車場のライン引きをやらせています…。キャディーさんたちはライン引きのプロではないので当然のことながら仕上がりは良くありません。なぜ、あんなことをキャディーさんにやらせているのか!?と尋ねたら「給料を払っているので働かせないと勿体ないから」とむしろ自慢げに答えられました。ここで考えなければならないこと…本当に勿体ないのはキャディーさんの賃金なのか!?ということです。…違いますよね?本当に勿体ないのは「お客さんを入れることができない経営者や営業職員、それにこんなことを考える支配人の給料(役員報酬)」だと私は思います。

道具の活用にしても同じこと…
よくある話ですが玄関マットやレンタルの掃除道具が勿体ないからといって市販の掃除道具で済ませようとしたり、定期的に清掃業者を入れず従業員たちの素人清掃で済ませたりする…これも間違いです。会社や店舗は人の出入りの数や環境も家とは比べものになりません。家の掃除道具はそんな物をまで使わなくとも十分きれいになりますが会社や店舗の掃除道具はプロの道具を使わないと一定以上の美観を維持することはできません。ウチの塾も毎日2人でモップがけを行います。でも10日を過ぎたあたりからゴミの取れ方が悪くなってくるので「いつ交換に来るのかなあ…」と待ち遠しくなるものです。もちろん、3ヶ月に一度、床面と絨毯、それにガラスは専門の業者が3時間がかりでキレイにしてくれます。私たちはそれを3ヶ月間、何とか維持するだけで精一杯です。

不思議なことですが、こういうことを正しいと思っておられる経営者は決まって書損の裏に再び印刷やコピーをさせようとします。ウチの塾でも少なからず書損は生じます。でも、その裏面に再び何かを印刷して仕事をしようとは思いません。裏紙は従業員のメモ用紙か塾生たちの計算紙と決まっています。そもそも裏紙を漏れなく使用したところで幾らの経費削減になるのか…?書損率を3%としたとして紙代購入費用の3%。実はコピー用紙自体は1円にも満たない安価なもので実際にはトナー代やインク代の方が遥かに高額なのです。裏紙を集めて一生懸命に使っても「骨折り損のくたびれもうけ…」。それに割く人件費や業務ストレスを換算するとかえってマイナスになるということです。

他にも新聞折り込み代をケチってポスティングに社員を使うことも同じ類の間違いです。新聞折り込みはチラシを配布する手段として、今のところベストな選択です。それを証拠にポスティングが好きな塾長に「業者に人件費を払ってまでポスティングという方法を選びますか?」と聞けば、必ず「No!」という答えが返ってきます。固定給を払っている従業員にポスティングをやらせて新聞を折り込み代を浮かせることに魅力を感じている証拠でしょう。

他にもいろいろありますが、会社(店舗)にとって経営者の感覚や考え方は生命線です。会社は従業員をプロとして育成し、プロの仕事をさせ、適正な利益を生み出さなければなりません。本来プロでない分野で従業員を使ってしまうと当然、専門分野が疎かになります。こういうことを経費削減と言って憚(はばか)らず、間違ったことだとも気付かずに従業員の士気やプライドを下げ、会社の売上を下げるという悪循環を経営者自らが率先してやっていることが多いのです。

会社(店舗)には削ることのできない必要経費と呼ばれるものがあります。

分かりやすいところでいえば…適正人件費、地代家賃、消耗品費、修繕費、宣伝広告費、雑費(清掃関連費)などです。これらをちゃんと使わずに多少の経常利益を出しても何の意味もありません。客観的に人材の年齢と能力を適正評価した給料で従業員を雇うこと、必要な消耗品や備品を買うこと、壊れていたり老朽化しているものを適正に修理補修すること、店舗美化に経費を使うこと…全て必要経費です。これらを適正に捻出した結果、役員報酬が出せなかった…経常利益がなかった…仕方がありません。それが経営者の能力と一層努力するべきです。お客さんを集めるのは経営者の仕事なんですから…。簡単に言うと役員報酬や経常利益は必要経費を使ったあと結果的に出てくるものです。従業員は役員報酬や経常利益のために働いているのではありません。経営者が自分の役員報酬や経常利益を最優先に考え、適正経費にお金をまわそうとしないのは、少々キツイ例えかもしれませんが、「学校に給食費を払わず携帯や遊興費にお金を使う親」と同じ間違った思考です。

話は随分と逸れたようですが、親も経営者もそして政治家も同じです。景気が決して良いとは言えない昨今、小手先の知識やテクニックに走らず自己犠牲の精神と努力する覚悟がなければ人の上に立って人様の生活や仕事の責任を持つことなど到底務まりません。私も含めて「親が親たる所以、経営者が経営者たる所以とは一体何なのか?!」今一度、考えなくてはなりません。



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